ラージヘッド、メイプルネック3点止めである。

 ネックの材質が変わると音色も変わる。

 メイプルはかなりブライトな音になる。

 しかし、こいつは俺が買ったわけでもないし俺のものでもない。 はて?

 ’02.11月18日。宇都宮「ビックアップル」LIVEの時、 

 マスターは自分でもギターを弾くし、マニアでもあるようで

 何本ものギターがホールの内につりさげてあった。

 以前に来た時には、何もきにならなかったのだが、

 リハーサル直前にこのギターが俺の目に入った。

 よく見ると「ASK」と書いてある。

 

 俺はさっそく値ぶみをしながらマスターに「これ弾いてもいい」と云いながら、

 アームレス・ストラトに後付けでフロイト・ノーズのロック・アームを付けた穴がブリッジとネックの処にあったし、

 この黒はツヤ消しだし塗り替えたナ。などとチェックしながらまたいつもの攻撃を開始した。

 「マスター!これいくらなら売るの?」胸の内では「7万ってとこだな」と思っていたが

 口から出た言葉は「3万なら今すぐ買うけど!」

 マスターはとても困った顔をしていた。

 俺はさっそくチェックもかねながらリハで使い始めた。

 「ペグが甘くなってるナァー」とか「トーン・コントロールがガリッテる」とかブツブツいいながらもかなり気に入っていた。

 そしたらマスターが思わぬ事を云い始めた。

 「このギターにはいわくも思い入れもあるから売ることもあげることもできないけど

 加奈崎さんが弾いてくれるのなら生涯貸与します。」と云った。

 グサッときた。さすがギター弾きである。

 ギター弾きの心のド真中に直球を投げてきやがった。

 「オウヨ!そのかわりマスターが俺より先に死んだら一生返さないからナァー」

 まったく、楽器・人との出会いは真剣勝負である。

 だからして、このギターを“ビックアップル”と名づけた。

 当日の舞台でステージ・デビューさせてやった。

 かなり使えるヤツだ。

 シリアルはNO.710828である。