チェットUである。

 チェットTを手にしてから、俺は不安になった。

 プロにとってギターは弾けば弾くほど、消耗品でしかない。

 こいつがだめになったらと考えてしまい、次から次へとこいつを買った。一時は4本持っていた。

 しかし、チェットT以上のチェットはなかった。

 楽器の形、ピックアップの中身、プリアンプの性能、若きギタリストの告ぐ。

 楽器メーカーも、しかたもなく、会社である。

 ニューモデルを発売する時には、研究費等々を計算して、ベストな物を作り、定価を決める。

 それがある程度の評価を受けると、開発ではなく、コスト・ダウンをやる。

 だから当然、中身も違う訳だ。

 ミュージシャンにとって楽器との出会いは、人生を決めるかもしれないのだ。

 自分に必要な楽器を手に入れる本能がなくてはだめなのだ。

 コレクターが喜ぶ、変なオールドや、カスタム・ショップ名の付いたギターをありがたがっている場合じゃない。

 メーカーのクラフトマンの思いのこもった楽器を、自分の手で自分の思いどおりに育ててやるのが、ミュージシャンの努めだ。