2000年12月17日。
既に暗くなったスイス市内を、会場の「シネマレイク」へと向かう。
JRの線路を渡ったとき、わずかに雨が舞ってきた。
前日のチャットでどなたかが「芸人さん、雨男だからなぁ〜」と言っていたのを思い出して微笑んでしまう。
会場前は既に入場を開始しており、BOMBさんがその整理にあたっていた。受付ではポニーさんたちが元気な声で来場者を迎えている。
古い扉を押して会場へ・・・僕自身が最後にここで映画を観たのはいつだったろうか。もう、記憶があやふやなほど彼方になっていた。
小さな映画館だ。1階席しかない・・・全体で約200席くらい?その椅子が徐々に埋まっていく。
前日のチャットで「レプリカ」さんが「変な帽子かぶっていますから、見つけてくださいね」とおっしゃっていたが・・・すぐに分かった(笑)ご挨拶をし、一緒にいらっしゃった「蓮尾」さん、「薫」さん、「Hiro」さん、「naka」さん・・・皆さんに挨拶させていただく。皆さんはとても穏やかな表情で・・・さすがベテランさん、という感じ^^「見届けに来た」そんな雰囲気が伝わってくる。
「ん?」さんにもお行き会いし、「先日はチャットで失礼しました^^;」などと・・・。
和やかな空気の中、開演時間は近づく。ほぼ中央・・・やや後ろに席を取った。
ステージは、「映画館」そのものだ。白いスクリーンもそのまま・・・ステージの四隅には脚立に組まれたシンプルな照明・・・
正面にはRolandとPeavyのアンプが据えられている。その右にはチェットアトキンスとダヴ。左には白いストラト。
客席がかなり埋まってきたなと思ったとき、5分前のブザーが・・・・そして7:30、再びブザーが鳴って会場は暗転した。
ステージバックのスクリーンが青く染まっていく・・・会場は静まり返る。
ステージ両サイドに立てられたスピーカーから聴こえてきたのは雑踏の音・・・そして流れ始めるメロディー・・・「キャンドルソング」のインスト・・・優しい空気がステージから客席に流れてくる。やがて薄暗いステージに加奈崎さん登場。
黒のTシャツに黄色のパーカー、下は黒の皮パンツというスタイルで現れた加奈崎さんはチェットアトキンスを担ぎ上げて肩に掛ける。マイクスタンドの前に立ち・・・BGMが止んだ。
ベースやドラム・・・リズムを口で発し、指を鳴らし、手を叩き、床を足で踏み鳴らす。
そして歌い始めたのは・・・
1. さなえちゃん
会場は(僕が?)戸惑っていた。うーむ・・・
そういえば1週間ほど前に地元紙がこのライヴを取り上げた記事・・・小見出しが「さなえちゃんの加奈崎さん」だったよなぁ・・・
手拍子が起きる訳でもなく、じっと固まった客席に向かって歌う。サングラスの奥の目が「へへへ」と笑っていたように見えたのは・・・僕だけ?
途切れることなく、ヴォイスパーカッションのスタイルは続く。
2. ハッピーデイズ
会場に鳴る音は隙間だらけだ。指を鳴らす音、手を叩く音、床を踏む音・・・チェットアトキンスはそのボディーを叩かれることはあっても、まだ弦を揺らすことはない。
相変わらず戸惑っている客席・・・彼(文章上こう呼ばせていただきます)ははっきりと・・・一人だった。
まるでそれを選んだかのように・・・
まるで「ひとり」を確かめるかのように・・・
この空間にこれから発する自分を確かめるかのように。
パーカッションがピタっと止んだとき、幕が開いた気がした。
「サンキューーージャパーーーーン!!サンキューーーマイホームタウン!!」
<MC>
相変わらずのテンポ良い喋りが客席を和ませる。
「今夜はあまり喋らずに・・・たくさん歌おうと思っています」
・・・ワクワクして、思わず身を乗り出してしまう。
3.ひつじかいのうた
チェットアトキンスが初めてその弦を鳴らし、歌われたのはこの歌だった。
そういえば並木通りはイルミネーションが綺麗だったな・・・
シネマレイクの隣の銀行は大きなツリーを飾ってあったな・・・
4.山麓
<MC>
このHPのことに触れ、最近ロンドンからの書き込みがあったことを紹介。
来年は「ヨーロッパツアーか?」とのこと(笑)
5.ハープソング
6.ウーララ・ララバイ
7.涙が止まらない
お馴染みのノンマイク・アカペラ。天井の高い空間もまったく関係なし!
8.Japanese Wedding Song
BBSでリクエストした歌・・・もちろん全てがそれに応えてじゃないだろうけど・・・
聴きたかった歌がきけるって、単純に嬉しい。
<MC>
「500マイル」のフレーズから・・・
9.ミラー
<MC>
ここで初めてこの日の構成が明かされる。途中にゲストを挟んで1部・2部構成になるとのこと。
「加奈崎の30周年を祝って、どうしても駆けつけたいっていうスペシャルゲストがきてるからさぁ・・・」
分かっていたのは・・・このHPの接触者だけ?(笑)
「では、第1部最後の曲です・・・」
10.さらば東京
今まで僕が聴いた中で・・・一番「激しい」さらば東京だった・・・本当にそうだったのか?そう感じただけなのか?
<第1部終了・10分休憩>
休憩中、ステージではセット替えが行われている。ステージ上手は低くセットしたボーカルマイクとギターマイク、そしてパイプ椅子。下手は高いボーカルマイクとギターマイク。・・・そう「スペシャルゲスト」は・・・
ブザーとともに再び会場は暗転。スクリーンが青く浮き上がる。スピーカーから流れてきたのはリズムの打ち込まれたBGM・・・確か2/20のジャンジャンと一緒だ。次第にボリュームが上がる・・・そして・・・古井戸2000登場。
加奈崎さんは黒の皮ジャケットに着替えている。ダヴを掴むと椅子に座って譜面台の調整・・・はしもとさんは真っ赤なギルド・・・ライン+マイクの音取り。
「せーの!」
11.750円のブルース
はしもとさん、カッコイイなぁ・・・単純にそう思ってしまったギルドさん(爆)加奈崎さんは足を踏み鳴らし、体をのけぞらせ・・・座っているのがもどかしいかのように。
12.ポスターカラー
この辺りの思い入れはベテランの皆さんにお任せします^^
<MC>
「僕たち古井戸2000じゃなくて・・・古井戸にせ(ん)もーんでーす!!」
会場の笑いを誘う。ここに集まったお客さんの多くは・・・古井戸を懐かしく聴く世代なんだろうなぁ。
はしもとさんから「悲しいお知らせです・・・」
「古井戸2000は今日で解散します」
客席が「えっ?」となった瞬間、「来年は古井戸2001」です^^
13.幸せな街
二人は手を挙げて会場の拍手に応えながら・・・袖へ消える。
ステージは再び一人のセッティングに。会場BGM(この曲わかりません・・・後で加奈崎さんが30代に創った曲、みたいなことをおっしゃっていましたが・・・ご存知の方、情報を!)←「冬の匂い」です。
袖から登場した加奈崎さんはボーダーのシャツに黒のパーカー。ストラトキャスターを手に取る。流れてきたのは・・・
14.最後の誘惑
コーラス(?・・・エフェクターの種類違っていたらごめんなさい^^;)のかかったストラトの音色がとても綺麗で優しい。これもBBSでリクエストしておいた曲。うーん、嬉しいなぁ。
15.Tell Me MaMa
16.Knife
会場の空気が張り詰めるのがわかる。そこに斬りつけるようなヴォイス・・・ギター。
そして・・・
17.Walkin’ in the Heaven
アンプの前にうずくまってのフィードバック・・・
18.凡夫
ライヴの登場BGMでよく耳にしていた曲だったが、生で聴くのは初めてだった。ミュート気味の低音弦が生み出すリズムとボーカル・・・良かったです!ライヴでまた聴きたいなぁ。
<MC>
30年の音楽活動、そして今年のジャパンツアーに触れ・・・「お返しをする番だと思ってる」
入場の際、配られたパンフレットに書かれていた「俺にはもうやりたい事なんてひとつもないんだ。ただやるべき事と、やらなきゃならない事だけが俺の前にあるだけだ。」の文章が蘇る。
ここでストラトをチェットに持ち替え・・・
19.悲しみの正体
何度か聴いていたはず・・・でも、この夜はなぜか特別な意味を持つように・・・強烈に届いてきた。加奈崎さんが違った?それとも、聴く僕が違った?
20.いない(で、いいのかな?「いない。君がいない・・・」っていう歌です。
<MC>
「では・・・最後の歌」と言って・・・
21.MY LIFE
・・・圧巻でした。
当日の朝5時に書き上げた(BBSによる)という「3番」・・・ここには書きません。今回来られなかった皆さんもきっと聴ける機会があるでしょう。
チェットアトキンスを下ろした加奈崎さんは拍手に応えながらステージ袖に・・・拍手は鳴りやまず・・・
アンコールの拍手の中、登場した加奈崎さんはマーチンOOO−28「柳吉」を担いでマイクの前に・・・
アンコール1.Old 50
「柳吉」の繊細な音色・・・20数曲歌ってもまったく衰えない声。
途中「20歳になったら」(でいいのかな?自信なし^^;)そして再びOld50へ・・・
アンコール2.GOSPEL
「柳吉」を肩から下ろした加奈崎さんはマイクで「サンキュー!」と言った後、スタンドから外れて頭を下げた。
深く・・・
深く・・・
<了>
|